ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
http://japan.ikahochurch.com
ikahochurch@gmail.com

 
「ヨセフの再会」
完全版PDFダウンロード

 

第一章 決断 第19

 先日、本宮に戻ると、二人の客人が待っておられた。一人は献酌官殿あり、もう一人は親衛隊長ポティファル将軍殿であった。私の執務室に入って来られると、ひざをかがもうとされたので、慌てて引き止めたよ。いくら陛下の寵愛を得て仕えているとはいえ、お世話になった方たちだ。献酌官殿は二年も私を忘れていてしまったことについて重ねて謝られ、ポティファル将軍殿はご自分も真実を知っていたが、どうすることもできなかったとし許しを求めた。
 私はまず、献酌官殿に申し上げた。
 「二年もの間、一日も欠かさず知らせを待っていました。昼も夜も献酌官殿がお呼びするのを待っていました。しかし、もし献酌官殿が私をすぐ陛下に申し上げてくださったならば、少し早く釈放されたかもしれないが、私はまだ依然として奴隷だったはず。ただ罪を犯した奴隷が罪を犯していない奴隷に変わっただけでしたでしょう。未来も希望も自由もなく昔のように一日一日生きて行かなければならなかった。しかし、二年間、私を忘れて下さったおかげで、私は今こうして栄光を得ることができました。これらすべてのことを司る神に感謝と捧げます。」
 一方、ポティファル将軍と話すときは少し困ってしまったよ。奴隷として将軍殿とその家族のために仕えているときにも、実はその夫人に関していくつかの噂は小耳にはさんでいたのだ。しかし、それを口に出すわけにはいかない。将軍殿が建前では怒っていらっしゃったが、牢に閉じ込められている間にも、いろいろと配慮をしてくださった。あの夫人の下で働くぐらいなら監獄生活がよっぽど楽だったかもしれん。ハハハ。
 私はごちそうでもてなし、二方と楽しい時間を過ごすことができた。とても温かい出会いであった。すべてが遅かったと考えたとき、誰もが間違っていると思ったとき、神は一寸の狂いもなく私をここにまで導いてくださったのだ。すべての栄光を神にささげよう。
 だがなあ、アセナテ、私は忘れておらん。 十人の血を分けた兄たちを忘れるわけがない。彼らが私に何をしたのかも忘れるわけがないではないか。そんな彼らとの再会が楽しいはずも温かいはずもなかろう。会うなどもってのほかだ。私はそんな暇ではない!
 ふむ……。
 (しばらく 考えこみながら室内をゆっくり歩き回る)
 (次第に怪しい表情を浮かべながら笑い出す)
 ふふ、しかし、面白いかもしれんな。
 (高らかに笑う)
 よかろう。己の嫉妬と憎しみで私と父との間を引き裂き、私とベニヤミンの間を引き裂いた彼らか来たとな。よかろう。会おう。会おうではないか。
 誰か!誰かおらぬか!
 (退場)

 第一章幕
 

第二章 葛藤 第1話 →

← 第一章 決断 第18話

ヨセフの再会トップ

伊香保中央教会トップ