ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第三章 苦悩 第1話

登場人物
ヤコブ

場所
ヤコブの家



- 照明はスポットライトのみ。

- 照明が明るくなる(または幕が上がる)

- 中央にヤコブが横(左右いずれも可)を向いて立っている。


(横を見て、息子たちに話をする)

はあ…。はあ…。ゴホゴホ…。はあ…。はあ…。雨が降らん。なぜ、雨が降らんのじゃ。穀物が穫れんではないか。あの土地を見てみろ。燃えるように赤く広大な大地を見てみろ。空から炎の塊が休みなく降ってくるようじゃ。アブラハムの神、イサクの神がどうして、このような試練をお与えになられるのかのう。

遠い昔アブラハムをお呼びになり、子孫に与えるとされた土地がまさにここではないか。カナンの地ではないか。祝福の地ではないか。約束の地ではないのか。じゃあ、なぜ、このように乾ききっておるのじゃ。どうして、このように草木が一本も生えない荒野と化してしまったのじゃ。

お前ら、また、食料が底をついてしまったのう。早うエジプトに行って来なけりゃならんじゃろう。ここで、あの雑草たちのように、私たちまで、干からびて死ななければならぬというのか。お前らも行って来たから分かっとると思うが、エジプトには食糧が有り余っているというじゃないか。肥沃な土地で人々が腹いっぱい食べ、喜び歌うそうじゃないか。

分からぬ。本当に分からぬ。アブラハムの神、イサクの神が私たちを騙したのじゃろうか。どうして祝福の地であるヘブライは飢饉に見舞われ、その異邦の地である神を知らないエジプトは穀物で溢れかえっとるというのじゃ。

お前ら、また行って来きなさい。金ならあるじゃろう。以前、穀物を買ってくるときにはどういうわけか、その費用がすべて荷物の中に入っていたというが、よもやお前らがまさか食料を盗んだわけではあるまい。ああ、信じる、信じるよ。この前は何か手違いがあったのじゃろう。今度行くときは前回分まで持って行くようにしなさい。こんな腹の足しにもならぬ金など、いくらでもくれてやるわい。

早う行って食料を買ってきなさい。それに、捕まっているレビ…、じゃない、シメオン、シメオンも連れて来ないとな…。

お前ら、今度行った時には変なまねをするでないぞ。一体、何をしでかしたら回し者呼ばわりをされるのかのう。これこれ、何もなかったわけがないじゃないか。エジプトがどんな国なのか、お前らもよく知ってるじゃろう。エジプトにはこの世の富と栄華すべてがあるようだと言っておったではないか。

早くいっておいで。ほら、早く…。そうだよ、レビ…いや、シメオンだったな?さっき言ったではないか。そう、シメオンも忘れずにつれて来るんだよ。

何?なんだと?ならん!ならんと言ったらならんのじゃ!お前らはどうしてそう、聞き分けがないのじゃ。この老いぼれに何度、同じことを言わせれば気が済むのじゃ。お前ら、わしはもう今年で百三十だ。そんなに死んで欲しいんか。この老いぼれを苦しめて、そんなに早くくたばって欲しいんか!ゲホゲホ…。はあ…。はあ…。

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