ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第一章 決断 第7話

 そして二つ目は、私には逢いたい人物がいたということを悟ったのだ。それは誰なのか、もう知っているね。いかにも、ベニヤミンだ。おお、ベニヤミン!今の今まで一日たりとも忘れることのできなかった愛する弟ベニヤミン!私を殺そうとまで憎んでいた彼らがベニヤミンにはどういう仕打ちをしただろうか。おお、考えただけでも胸が苦しくなる!生きてはいるのか、あるいは彼らの凶暴な彼らによって裂けられてしまったのか!この世で最も愛した母の息子。この世で最も濃い血と肉でつながれた弟、この世で…この世で…ああ、ベニヤミン!お前を守ってやりたかった。私の生きがいはお前を守ってやることだったのに、この愚かで罪深い兄とやらは、あまりにも遠くかけ離れ、顔も合わせることができぬとは。ベニヤミン!私を許しておくれ!生きてはいるのか!どれほどつらい日々を送っていることだろう!ベニヤミン!ベニヤミン!
 私はもう一度望みをかけることにした。 何としてでもこの世でベニヤミンに一目逢いたかった。たとえ過去に見た夢が嘘だったとしてもかまわん。一度だけベニヤミンに逢うことができるなら、ベニヤミンの手を握ることができるなら、ベニヤミンをこの胸でしっかりと抱きしめることができるなら、この牢獄の生活も耐え忍ぶことができるような気がしたよ。だが、このままではいかん。何としてでも牢獄から出なければならなかった。だが、それがいつになったら叶うのか知る由もあるまい。振り返ってみると、アブラハムの神、イサクの神、そして我が父であるヤコブの神が私と共におられたように思えてならぬ。いや、そうとしか考えられないではないか。この私が卑しい奴隷として連れてこられた時も、すべてが万事うまくいくように導いてくださった。ましてや牢獄に入れられていた時でさえ、牢獄の長が私にすべての管理を任せてくれたおかげで、ほかの囚人たちより多くの自由を与えられることができた。それだけではない。私がいた牢獄は特別だったんだよ。ポティファル将軍の邸の中にあるその牢獄は主に罪の疑いのある官僚たちが入れられるところだったので、彼らから言語と文化などに関しては、むしろポティファル将軍の邸にいたころよりも幅広い知識を得ることができた。将軍も私の釈放を望んでおられたが、頑固な夫人のせいでかなわなかったのかも知れんな。

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