第二章 葛藤 第2話
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ヨセフの兄たち、左側の椅子に向かって、その場にひれ伏す。
- 壮大な音楽が鳴り響き、華やかで権威のある衣装を着たヨセフが左側の椅子の後ろから入ってきて座る。
ヨセフ :(通訳に話す)
通訳 :皆の者、面(おもて)を上げよ。
- 兄たち、恐れながら、ゆっくりと顔を上げる。
ヨセフ :(通訳に話す)
通訳 :おぬしたちはどこから来たのか。この国に来た理由を尋ねておられる。
ルベン :(大声で)し、臣たちは食料を買うためにカナンから来ました。
通訳 :(ヨセフに伝える)
ヨセフ :(通訳に話す)
通訳 :(大きく権威のある声で)嘘をつけ!おぬしたちは私の目を節穴と思っておるのか。お前らはこの国を偵察に来た回し者であろう。
ルベン :ち、違います!何を言ってるんですか!違いますよ!
シメオン
:あっしたちは、ただカナンの地から穀物を買いに来ただけです。これを見てくだせぇ。これが食料を買うための資金です。回し者などとは、そんな物騒な。あっしたちみたいな、けちな者たちに何の疑いがございましょう。
レビ
:そうっすよ。ここにいるあっしたちは、みな一人の父親から生まれた兄弟っす。そんな、回し者だなんて、めっそうもございあせん。何でしたら、ほれ、持ち物をみんなご覧になってもかまいませんぜ。それにしても、何でまた、そんなことをおっしゃるんで?
通訳 :(ヨセフに伝える)
ヨセフ :(通訳に話す)
通訳
:不届き者め!おぬしら、恐れ多くも宰相閣下の御前であるぞ!この期に及んでも白を切る気か!おぬしらは隣の国からこの国の偵察に来た回し者であるぞ。私は早くから周辺国らがこの国の豊富な食料を略奪しようと虎視眈々とすきを狙っているということを知らぬとでも思っておるのか。もし、正直に白状するのなら、今回だけは許して遣わす。相違ないな?
ルベン :宰相閣下!私たちは、ただ、カナンの地に住んでいる家族です。回し者じゃないですよ。とんでもありません。私たちは十二人兄弟で…。
通訳 :(ヨセフに伝える)
ヨセフ :(通訳に話す)
通訳 :十二人兄弟とな?しかしおぬしらは十人しかおらぬではないか。
ルベン :そ、それは、す、末は今、うちでお父さんといまして…、そして、もう一人、もう一人は…(うつむく)昔、いなくなりました…。
通訳 :(ヨセフに伝える)
ヨセフ :(通訳に話す)
通訳
:とうとう本性を現しおったな。私が回し者だといったのはこのためだ。おぬしらの末の者がカナンの地でおぬしらの父親と一緒におるということであるなら、その末の者を連れてまいれ。もし、おぬしらが末の者を連れてくればよし、今言ったことが真実と証明されるだろうが、もしも、連れて来ることができなければ、ここから永遠に出られないと思え!これからおぬしたちの中から一人を送り出そう。命が惜しければ早急に末の者を連れてまいるがよい。よいか!
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