ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第三章 苦悩 第6

ああ、長男。ああ、長子の権利。私が生まれた時から、あれほど望んでいた長子の権利を、あいつは、肌の赤い、毛むくじゃらで獣を追いかけまわることしか能のないエサウは、私がどんなにもがき苦しんでも得ることのできない長子の権利を、何の努力もせずに自分のものにできたんです。

あんなやつに長子の権利など贅沢だ。無用の長物。高価な真珠を豚の前に投げてやるようなものです。わたしは、チャンスを狙っていました。ああ、本当に長かった。そして、とうとう、その時が来たんです。

いつものように朝食を終えた後、エサウは狩りに出かける支度をしていました。父は長男としての責任を忘れずに、どこへ行っても体に気を付けるように言っていましたが、彼はいつもどこ吹く風でした。

狩りを終えて帰ってくるとき、彼は決まって腹を空かしていました。彼が戻ってきたら家の納屋を開けては飢えた獣が餌をむさぼるように、食べ物を平らげていました。

私は彼が狩りを終えて家に帰ってくるところを狙いました。そして、彼の最も好きな色で作られた食べ物をこしらえたのです。そうです。エサウの好きな赤いレンズ豆の煮物です。

あの日、私は真っ赤なレンズ豆の煮物と出来立てのパンとを作り、風上の方に陣取り、エサウの帰りを待っていました。遠くからでもにおいを風に乗せ、彼の食欲を刺激するための知恵でした。どうです?我ながら素晴らしい作戦でしょう?あの鈍いおつむで、このヤコブに追いつこうなんて到底無理な話なんです。

案の定、彼は罠にかかりました。その日は特に疲れていたのか、並べた食べ物が何だったのか、どんな味だったのかも知らなかったようです。遠くからにおいを嗅ぎつけ、急ぎ足で来たと思ったら、私に向かって「その赤いもの」を食わせてくれとせがんできました。

内心、胸が小躍りしました。

おう、食わせてやる、食わせてやるとも。お前に食わせるために作ったんだよ。ですが、ここは大事な場面です。落ち着かなければなりません。そんなことはおくびにも出さず、私は努めて平気なふりをして、静かに言いました。

兄貴、もちろん差し上げますとも。誰よりも大事な兄貴のお願いなのに差し上げないわけがないではありませんか。ですが、私も一つだけお願いがありますが、聞いていただけますか。

本来、気が短いエサウです。お願いだろうが何だろうが、早くその赤いのを出せと、騒いでおります。私は動揺せず、一つ一つ冷静に言葉を選びました。ここでしくじるとすべてが水の泡です。

兄貴、ここにパンと煮物があります。いくらでも差し上げます。ただし、兄貴が持っている長子の権利を私に売ってください。

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