ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第五章 追及 第6

どれほど時間がたったでしょう。一人の青年が王室の中へと導かれてきました。あなたを初めて見たのは、まさにその時でした。正直、驚きました。卑しさなど、悪賢さなど、狡猾さなど、微塵も感じさせません。あなたの目は実に澄んでいました。透き通っているようでいて、熱さを感じるものがありました。あなたがどこに視線を向けても、まるであなたが見つめるその場所が真っ黒く焼け焦げるかのように強烈でした。

陛下も同じことを思っておられたのかも知れません。あなたをご覧になった時、しばらくは何もお話になりませんでした。何かにとても驚かれたご様子です。献酌官様に勧められて初めて、夢のことをおっしゃいました。すると、さらに驚くべき光景が繰り広げられたのです。あなたの口が一度開かれたと思ったら、まるで堰を切ったように休むことなく信じられない言葉が飛び出してくるではありませんか。それは、私が今まで聞いたこともない神秘的な言葉でした。思いもよらなかった解き明かしでした。

あなたはそのようなお言葉を一度も詰まらせることなく話されていましたね。あなたが言い終えると陛下をはじめ、他のすべての家来たちが我を忘れて見入っていました。いくら学識が高く自尊心の強い者だったとしても、誰があなたの解き明かしに異議を唱えることができたでしょうか。あなたの表情は話をはじめられた時と全く変わりませんでした。あなたのお顔は天の御使いのように輝いていました。その輝きは、王室全体をまぶしく照らしておりました。

陛下はすぐにその場であなたにエジプトの宰相という高い官職とすべての権限を授けると言われました。そして数日後、私はお父様を通して陛下が直接あなたとの縁談を提案されたということをお聞きしました。お父様はその場で陛下の命に従うと申し上げたそうですから、私がこれをお断りすることはできません。

正直に申し上げますと不安でした。一にも二にも、あなたが宰相という高い地位にの方だったからです。

この王宮は嫉妬と謀略が横行する世界。いくら権謀術数に長けた者あっても、一晩のうちに、ちり芥と化してしまう世界です。あなたがポティファル将軍家の監獄に閉じ込められたとき出会った献酌官様と料理官様も同様です。彼らのように絶対的な権威を持つ者でも中傷と謀略の罠から逃れることはできませんでした。幸運にも献酌官様は釈放されましたが、料理官様は結局に木に吊るされてしまったではありませんか。陛下の寵愛を受けた者であったとしても、いつ何時(なんどき)、そのような恐ろしい魔の手にかかって犠牲になるかも知れないのが、ここ王宮なのです。

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