ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第五章 追及 第7

あなたが異邦人であったということですか?いいえ。そのようなことなどは全く問題になりませんでした。あの時、陛下の前での堂々としたお姿、聖なる泉が湧き出るように夢を語るあなたの姿を一目見たならば、このエジプトのどこを探してみても、あなたに心を許さない女性などいなかったはずです。私も女として同じです。あなたが宰相ではなく、また奴隷に戻ることになったとしても、私はあなたの心を得るために私の人生すべてを捧げたに違いありません。

月明かりの夜、あなたはこんなことを言ってくださいました。ミディアン人の商人たちによってエジプトに連れて行かれてくる時のこと、その時も月明かりの夜に空を眺めてみたところ、すぐにでも落ちるような大きい満月と多くの星が見えたそうですね。その月や星をみて、あなたは以前に見た夢のことを思い浮かべたと言っておられました。

「夢の中では、太陽と月と十一の星が私に丁寧にお辞儀をした。そしてまた、神が曾祖父アブラハムにされた御言葉、子孫を天の星と同様にしてくださると言われた。私の見た夢は、確かな希望であり、アブラハムも私も眺めた夜空に輝く無数の星たちも神が見せてくださった希望だったのだ。しかし、当時の夜空に浮かんでいた月と星は一様に私をあざ笑っているように見えた。未来も希望もない、ただ冷たくあざ笑っていただけだった。」

あなたは底を見たという話もしましたね。人生の底を見たと言いました。兄弟たちからひどいことをされてた上に銀二十で売られ、ここエジプトのまで連れてこられたときのことです。その時あなたは地獄を見たと言いました。私は初め、その言葉を信じることができませんでした。香油のようにいつも優しいあなたからそのような恐ろしいことを感じることはできなかったからです。

私には分かりかねます。幼い頃から豊かな生活に慣れていたからしょうか。もどかしい限りでした。私の心を知っているのかどうか、その話をされるときには、とても寂しそうに見えました。普段の私を見つめる視線は穏やかですが、過去のことを口にされる時だけは、いつも悲しい表情をされておりました。十七の若さで奴隷として連れてこられたあなたは、どれほど大変なつらさに耐えなければならなったでしょうか。奴隷になってだけではなく、監獄でも長い間過ごされたその心の痛みは、私の想像を超えるものなのでしょう。そのようなお姿を見ると、本当にあなたには言い難い過去がある方であるということを推測することができました。

しかし、あなたは逆境を力に変えられる方です。ポティファル将軍の家に仕えながら、あなたはエジプトを学びました。言語と文化を学べたことでしょう。王の監獄、権力の争いに敗れた者が入る監獄に閉じ込められている時には王室に関して学ぶことができたと私に教えてくださいました。

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