ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第六章 従順 第2

今日彼らを見ると、確かに人間は変わらないようです。

ルベンをご覧になりましたか。父の寝床を汚した彼はまだ兄弟たちから後ろ指をさされているようですね。気の毒な人間です。ただ、あの時、彼らが私を手にかけようとしたとき、私の命を守ってくれたことは覚えております。

シメオンとレビはどうでしょう。彼らからは殺気がにじみ出ています。残虐な殺人を犯した彼らの手には、いくら洗ってもぬぐい切れないほどの血で染まっています。その血が叫んでいます。シェケム人たちの恨みの血、恨みの叫びです。憎しみの叫び声です。悔しさを訴える血の叫びです。嘆きです。おお、彼らの目を見ましたか。あの目つきは人を生かす目ではなく、殺す目です。彼らの目と耳はふさがれ、彼らは頭の先からつま先までの全てが罪に染まっております。

ベニヤミンさえいなければ、あそこにベニヤミンさえいなければ、ひと思いに!ああ、神よ!

彼らがもしも悔い改めたのであれば、私は許したはずです。彼らが過ちを悔いたのなら、私はその場で彼らを抱きしめたかも知れません。しかし、彼らは悔い改めることも、許しを求めることもしませんでした。

神よ!彼らが自ら犯したことについて少しでも罪悪感を感じたならば、少しでも私に申し訳ない気持ちが残っていたのなら、私を探さなかったでしょうか。彼らは私をミディアン商人に売り飛ばしました。彼らはおそらく、その商人がここエジプトに向かっているということを知っていたはずです。私に少しでも申し訳ない気持ちがあるなら、私が生きているのか死んだのかぐらいは知りたいと思わないでしょうか?自分の目の前にいる者は、この国を治めている宰相です。あれほど私が叱りつけたのであれば、過去に犯した過ちを悔い改めて、私に過去の弟を探してくれということもできたはずではありませんか。この国は隅から隅まで知り尽くしております。私は陛下の名によっていかなることもできる力を与えられております。このエジプトの中で誰かを探し出すことなど、赤子の手をひねるようなものです。しかし、彼らは言わずじまいでした。このヨセフについては最後まで口を閉ざしていたのです。

ああ、何故、皆このように口を閉ざしているのしょう。その中でも、神よ、私はいつもあなたに対してもどかしさを感じております。わかっておられますか。

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