第一章 決断 第3話
ある日、私は夢を見た。私が兄たちと一緒に畑で束を束ねていたところ、私の束がまっすぐ立ち上がり、兄たちの束が私の束を囲むとひれ伏して拝むではないか。そして、またある日、夢の中で空に浮かんでいる太陽と月と十一の星が私にひれ伏したのだ。その夢があまりにも不思議だったので、私はうっかり父と兄たちに話してしまった。軽はずみな行為だったということに当時は気がつかなかった。
愛する私のアセナトよ。このような私を、あなたは嘲笑うかね?ありがとう。私はあなたのそのような慈悲深い心に慰めを受ける。頼るところも人もない異郷の地で、陛下の大きな恵みとあなたの美しい心がどれほど大きな慰めになるのか知れない。
しかし、私の血を分けたの兄たちに、そのような思いやりはひとかけらも持ち合わせていなかったようだ。私が十七になる年、その日も私は父と一緒にいたのだが、兄たちの様子を見てくるようにと言いつけられたので家を出ることになった。
遠くに彼らが見え始めたころ、私を見つけた兄たちの声が聞こえてきた。その内容とは、何かを穴の中に放り投げるというものだった。それが、まさか私のことだったとは知る由もなかった。近づくなり、それまで着ていた綾織の着物を急に剥ぎ取るやいやな、この私を穴の中に放り込むではないか。おお、その綾織の着物は父の愛そのものだったのだ。愛のあかしだった。私はすぐに悟ったよ。その着物が剥ぎ取られる瞬間、私の父の愛が去ってしまうことを感じることができたのだ。
私がすべてをあきらめたとき、ユダの声が聞こえてきた。私を生かしておく代わりに奴隷商人に売ってしまおうというではないか。私はこれから何がどうなってしまうのか全く見当がつかなかった。穴から引っ張り上げられると、何かを言い出す間もなく、私は力づくでラクダに乗せられ、どこかへと連れて行かれてしまったのだ。
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