ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第一章 決断 第4

 そして、私は誰かの手に渡ることになった。そこは皇帝陛下の侍従長ポティファル将軍の邸だった。私は恐れおののいたよ。エジプト語も知らなければ、一体何をどうしたらいいのか全く分からなったからね。しかし、ポティファル将軍は情け深いお方だった。17歳の幼くみすぼらしい奴隷にもかかわらず、私を粗末に扱われなかった。いや、粗末どころか、少し経つと邸の中のすべてのことを私に任せて下さったのだ。これがどれほどありがたいことだったか。その恩に報いるためにも私は懸命に働いたよ。広い邸を整備し、家族の方々に仕えるために食糧倉庫の管理と清掃、料理に洗濯、 資金管理に至るまですべてのことを私に委ねて下さった。夜明けに目を覚まし、夜眠りにつくまで必死に働いた。今思えば、よくもそれほど熱心に働けたと思えるほどだよ。奴隷にすぎない私にとっては夢も希望もあるはずがない。だが、私は父から聞かされた神だけを考えた。
 だからといって、誤解しないでくれ。私が生まれつき素直だとか信心深かったからではない。異国の地に連れてこられた私に、母をすでに亡くし父の生死すら知らない私に、血を分けた兄たちに裏切られ奴隷として売られてきた私に、何を頼ることができたであろうか。
 ヤコブの神、私を愛した父があれほどまでに信じて頼った神。私が神を信じて頼った理由を誰かが尋ねるとしたら、それは、私が父を信じて頼ったからだと言えよう。私をあれほどまで大切にしてくださった父が信じる神が私を見捨てるはずがないではないか。もちろん何の根拠もない話だが、私は私の父であるヤコブの神なくしては一日たりとも耐え忍ぶことはできなかった。
 喜び?幸福?平安?そう。そのようなことを望む暇もなかった。ただ、食べること、雨風をしのげることさえできればそれだけで十分だった。将軍が施して下さる恵みに感謝しながら一日一日真面目に生きて生きていくことだけが自分の人生の全てだった。そして、それがまさしく喜びと幸福と平安を得られる道だと思ったのだ。だが、あれほど理不尽な事件に巻き込まれてしまうことになろうとは。

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