ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第二章 葛藤 第13

ユダ :人間的に見れば、もちろんそうです。ロトの父であるハランとアブラハムとは兄弟関係にあり、ハランとアブラハムの父はテラですから間違いなく同じ血筋です。しかし、神の中ではそうではありません。神はアブラハムを呼ばれた時、大いなる民族とし祝福とされるという約束されます。ですが、神が望まなかったロトを連れて出て来た瞬間から苦難は始まりました。カナンの地に入ると神はアブラハムに対して、「私はこの地をあなたの子孫に与えよう」という一言だけをおっしゃいます。これは祝福の言葉でしょうか?いいえ。祝福どころか、ともすればアブラハムにとって呪いの言葉にも聞こえます。よく聞いてみてください。「私はこの地をあなたに与えよう」ではなく、「あなたの子孫に与えよう」と言われたのです。だからこの言葉は、「私はあなたを呼ぶときに約束したように、大きな民族を成し、この地をあなたの子孫に与える。これは、すでに約束したことだから、そのようにするだろうが、私の命令に背いた(前を指で指し大声で)お前には与えないぞ!」という意味でなく、何でしょう。

シメオン :おいおい、そりゃ、あまりにも飛躍のしすぎじゃねえのか?俺の知っている神はそこまで冷たくはねえよ。なあ、ユダ、さっきお前が言ったように、神はソドムにいたロトを救ってあげたんだぜ。それなのに、ロトを連れてきたからと言って、そこまでするかねえ。

ユダ :聞いてください。先ほどお話ししたように、神が放った一言。この地をあなたの子孫に与えようとおっしゃった後に神は口を閉じられます。ベテルの東に行って祭壇を築き、神を呼んでも沈黙を守っています。ついにその地を深刻な干ばつが襲うと、アブラハムは約束の地をさっさと捨ててエジプトへ行きます。そこでは、自分の妻サラをエジプトの皇帝に奪われそうになる危機に遭遇した時も、神は何も仰りませんでした。再び、ロトと一緒にカナンに戻ってきて、やはり先に祭壇を築いたところで捧げものを捧げながら神を呼んでも返事がありません。やがて、二人の財産が増えるに伴ってその地が窮屈になると二つの家の羊飼いたちがお互いに争いを始めます。仕方なく、アブラハムは甥のロトに別れることを提案し、その結果、ロトは当時まで豊かにだったソドム行きを選び、アブラハムのそばを去りました。神はその瞬間をとても待たれていたように思われてなりません。アブラハムが神の命令に戻ってくるその瞬間、神に従うという地点へと戻ってくるその瞬間をじっと待っておられた気がします。そして、ついにロトがアブラハムのそばを離れるやいなや、神は沈黙を破り、アブラハムに語り始めます。それは以前のように「あなたの子孫に与えよう」というような冷たい言葉ではなく、とてつもない祝福の言葉、初めてアブラハムの耳に入ってきた、まさにその時の言葉、その声でした。神はアブラハムに東西南北を見渡しなさい、見渡しているこの地を「あなたの子孫に」ではなく、見渡しているこの地をすべて、「あなたに!そしてあなたの子孫に!永久に!与える」と言われたのです。これを見ても神がどれほどアブラハムがロトと決別することを望んでおられたのかを知ることができます。神が御使いを送ってロトを救ったのも、彼が真の義人、ソドムの滅亡を防ぐに足る義人だったからではありません。ソドムの住人たちと比べたら、それは少しマシだったかは知れませんが、結局は神がアブラハムを考えて、神がアブラハムを思う心があったからにすぎません。もし、ロトが同じ血筋だからと言って、彼の子孫であるモアブ族やアモン族とも一緒に暮らさなければならないとしたら、それは神がアブラハムを導かれた以前に戻ろうと言っているようなものです。

ダン :(ユダを見て)兄貴、過去のことは水に流して、みんなで集まって住んじゃだめなのかな?やれアブラハムだ、ロトだ、イシュマエルだ、イサクだなんて言わずにさ。そうなれば、戦争もなく、お互い仲良くできるんじゃないの。

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